Episode-Drama

「ふたつの祖国」2005.11.22  O.A

まず、ラッキィーだったのは台本貰いたて、言語練習用テープもまだ出来ていない、何の先入観も無い状態の時、たまたま一日、黒田福美さんと別 のドラマで御一緒していた事。
収録中、フッと思い当たった。『そうだ、黒田さんに読んで貰って録音しておこう!』彼女は韓国ドラマにも出演したり通 訳も出来る程の韓国通なのだ。が、その日は、あいにくMDレコーダーをスタジオに持って来ていなかった。他出演者やスタッフに尋ねまくり、最終的に小道具さんに無理言って、美術倉庫から小さなカセットテープを入れる、ひと昔前風のテープレコーダーを調達し、その日家に持ち帰らせてくださいと強引なお願いをして、ようやく準備OK!
食事休憩の時間を割いて頂いて、台詞を読んで貰う。
方言テープを頂くと、イントネーションだけでなく、録音してくださった方の感情移入、その芝居まで身に付けてしまう事になる。これはどうしたって避けられない。なら芝居の上手い人をコピーする方がいいに決まってる。 後からスタッフから頂いたテープは男性のもので、かなり語気が強く、ひとつを丸覚えではなく比較する素材があるのは結果 、とても心強かった。
韓国語部分はこの2つのテープを繰り返し聴き、丸暗記して、後は現場に付いてくれる韓国語指導の人と事前にチェックの時間を持てば、なんとかなりそうだ。 と、楽観したが、いざ日本で始まった収録で現場の言語指導の韓国人チエさん(私の娘役は韓国女優さんで流暢な日本語を話す必要があり両方チェックしている)に再チェックして貰うと、やはりテープだけでは聴き取りきれてない、微妙な音の違いがぼろぼろ出てくる。聴いて直せる箇所もあるが、発音自体が日本語に無い音もあり、これはもう今から訓練は間に合わないと諦め、言い換えるとか何とかボロを出さない方向に大急ぎ転換した。(フランス語や津軽弁の鼻濁音に似た、美しくデリケートな響きの音だった)
韓国のロケに入ってから、日韓文学の翻訳やシナリオに関わっている女性現地スタッフが加わり、台詞が文字言葉のままでナチュラルでない箇所が気になると現場で台詞の手直しをした。すると言葉にリズムが生まれ、すぃっと流れて、身体に馴染み、とても言い易くなるのだ。
知らない国の言葉でも話し言葉は生きている。面白い発見だった。

問題は韓国語なまりの日本語。これは流石の黒田さんにも教えて貰えないし専門の指導者がいる訳がない。
「パッチギ!」で笹野さんがいい味出してたと聞いて、ビデオ借りてみる。う~ん、そんなに訛ってない。昔、金嬉老事件のTVドラマで樹々希林さんのオモニが凄い迫力で強烈な印象だった。ビデオ探してみたらレンタルがあった。一つも韓国語を喋っていないのに在日オモニのリアル感は流石。でも在日とネイティブでは訛りの度合いが違ってヒントにはならない。むしろこのドラマで出ていた韓国女優さんの日本語ナレーションが参考になりそうで、ナレ-ション部分の音だけビデオからダビングしてみた。「わたし」が「わだし」に聞こえる箇所等、いくつか使えそうな特徴を書き出してみる。
で、飲み仲間の役者、山口祥行君に協力を頼んだ。彼は韓国学校卒業してアメリカにも住んでいたトリリンガル。まず彼に日本語台詞部分をFAXした。酒席で彼に助けを頼んだので冗談ぽい軽いシーンかと気楽な気持ちで「いいっすよ」と安請け合いした彼は、あまりにシリアスな長い台詞なので、かなりびびったらしい。 兎も角、彼もVシネ撮影の忙しい最中、時間作って家に来て貰った。 「ください」が「くだじゃい」に近い音になる。これもちょっと強く音にし過ぎると嘘になる。 微妙に、でも出来る限り、だどたどしく強い訛りにしたくて、一つ一つの台詞にくせを加えていった。独断でイントネーションをやり過ぎると、中国訛りとごっちゃになってしまう。 このニュアンスのベースは先に録音しておいたナレーションが役立った。
ここで、プロデューサーにもお願いしていたので、今回の在日韓国人コーディネーターが録音してくれたMDも届いた。コーディネーターさんは勿論流暢な日本語を話せるのだか、あえてちょっと訛りを誇張して台詞を録音してくださった。このMDに入っていた新ネタも余すところなく付け加え、セルフメイドの韓国訛りは、かなり鉄壁な出来上がりになってきた。
今回のドラマ一番の勝負どこは、この日本語部分だなと武者震い。

撮影を終えた今、根岸流ネイティブ韓国人の仕上がり具合にはかなり自信あります!
御覧になったら、『なんだこれだけ?』って思われる程あっけない台詞量 かもしれませんが….

「京都潜入捜査官」2000.7.6  O.A

最近どの仕事に行っても思う事ですが、一緒に育って来た仲間や、 気のおけない友達が必ずと言っていい程キャスティングされていて、 現場のおしゃべりが、楽しい事が多い。
この作品などまさに、主演はえり子さんだし、 それにベンガル、平田満と揃ってしまったら自分の家みたいです。 ところが、実はえり子さんとマスコミで共演するのはこれが初めてだったのです。 着物で楚々とした薄幸の2枚目芝居で決めているのに、 えり子さん、目が合った途端ガハハと笑ってしまう。
今迄色んなひとと共演しましたが、こんなに照れくさかったのは、はじめてです。

「父さん」 2000.7.8  O.A

萩原さんも高橋恵子さんもなんと御一緒するのは初めてでした。 それなのに、子供の事、健康の事、映画の事、話題は尽きることなく ロケの合間を縫ってのおしゃべりは楽しかった!
一緒のシーンが一番多かった嵐の桜井翔も、変に気負ったところがなくて、 素直な芝居してて好感持てました。
ジャニ-ズの人達って、みんな品が良くって可愛いですよね。
映画「なぎさ」で、すっぴんにほっぺた日焼けメークしたのが、 結構いいおばちゃんの味出してるな、と気に入っていたので、 今回もその路線でと思ったのですが、モニタ-のぞいた感じでは、 ほんとーにブスでした 。
ジャガイモなんか皮むきながら、さりげなく人生について語る いいシーンがあったりするのですが、さらっと演じたのが、
そのまま観る人の心に引っ掛かる事もなく、 さらっと流れてしまったらドウシヨウと実はONAIRまでドキドキしています。

「新・赤かぶ検事奮戦記」2000.7.15  O.A

終盤の長い法廷シーンで、私扮する 清水久子の波乱万丈な過去が、橋爪さん扮する検事によって語られます。10代、20代の回想シーンが入ります。
『10代 は他の人だろう』と思っていたら、監督がやってくださいと言う。「そうですか」とやってしまった。全く!女優という職業は、おそれもも知らない図太さがないと、やっていけない。
そのハタチの頃の私が、西田健さんに無理やり関係をもたされるシーンがあるのですが、(わー見たく無い。なんて言わないで)西田さんとはひと昔前、映画「海と毒薬」で、既にカラミを経験済みなのです。こう言うのって、昔の男に逢った様な妙な親近感があって、肌が覚えているというか‥全く!女優という人種は、デス。
「海と毒薬」はベルリン映画祭に出品され「これで、としえちゃんのオッパイも国際的ネ!」と奥田瑛二のカミサンの安藤和津に変な誉められ方をした、私の数少ないオッパイ出演映画です。

「小学校教師・沢木千太郎 事件ノート」2000.7.31 O.A

前々から、一度演ってみたかったんです、女刑事。
元々ピストル持つ役が好きで、Vシネの「タフ」の時はプロの殺しのエ-ジェント役だったので、正しい構えなどのレクチャ-受けました。その時悟ったのです。『刀は日舞でピストルは洋舞だ』ダンス暦長いので、自分で言っちゃあなんですが、いやぁーピストル持たせたらサマになるサマになる!東宝撮影所の中を、ピストル片手に物陰に潜みつつ進む練習、『おぉーカッコエエナァ~』と自己満足&陶酔の極致で、少年の様に遊び続けたものでした。
今迄正義のためにピストル持った事が無くて、凄く悪いか、追い詰められてかどっちかでした。そんな私にやっと来た刑事。でもこのドラマ、コミカルな役どころで銃撃戦に縁がありません。堺正章さん扮する結婚詐欺師に騙された過去を持ち、「殺人現場で再会した時、思わずピストル向けちゃうってのは ?」なんて、なんとかピストル使わせて貰おうとネバる私。スタッフ一同、いい顔しません。ドラマの上とはいえ公職に携わる身ですから。余り軽卒な行動は、デスヨネ。でも、劇中で私の提げているショルダーバッグにはず-っと、小道具さんに用意して貰った拳銃忍ばせていたんです。千載一遇のチャンスを狙って。 結局ピストルの出番は、ありませんでした。
堺さんとの再会シーンは、ピストル以上に怖いかもしれません。
そうそう、皆さんにお誉め頂く[消えもの]シ-ン、今回もいい食べっぷり お見せします。

「いい旅夢気分」 2000.8.30 O.A

オンエアーは8月30日、デレクターとしては、『秋の予感‥』という感じでいきたいと..
ですから、服装も夏らしくなく、涼し気な高原で遊ぶ‥って言ったってアツイもんはアツイ!!
今の此の暑さ(34度~38度)をよ~く体で覚えておいて、放送を御覧ください。旅番組の目には見えない苦労を体感出来て、きっと今迄より、奥の深いTVの楽しみ方が出来るのではないでしょうか?
御一緒した渡辺めぐみさんとは、今回初めてだったたのですが、タレントのプロの仕事の鮮やかさに「う~んなるほど!」と唸ってしまう日々でした。私は食べ物でも、本当に美味しいとなると、黙ってニヤッ。それで観ている方にも解って貰えるのではないかと、甘えと女優としての緩みが、こういうセミドキュメントの場合どうしても出て来ます。ドラマではない、素の私に近い、立ち位 置でいたいとの思いがあるからですが…
彼女は少しでも的確に伝えようとする配慮が行き届いていて 、食べる物の美味しさをカメラが捕らえ易いアングルにもっていき、口に運ぶタイミングも、まさに観ている人が一緒に味わえる気分になれるスピード。それを決してくどく、あざとくならない間合いで、サラッと自然にこなして、見事です。味や雰囲気を伝えるのにも、最大限の表現を選び取って行こうとする姿勢が、とても素敵でした。そうなんですよ!「美味しいもん食べて、温泉入っていい仕事だねぇ」なんてよく言われますが、写 る事、人に伝える事、それをいいなぁと思って頂くには、プロの技と苦心が必要なのですョ。と言いつつ無責任な私は、さりげなく先輩としてたてて下さる、彼女のリードに身を任せ、なんだかんだいってラクチン旅をエンジョイしてきました。
川を挟んだ旅館から丸見えの超オープンな混浴温泉とか、プライベートでは絶対入れそうもないお風呂体験も、タオル巻かずにカメラもなければ、もっと気持ちいいんだけどね‥って、この矛盾が旅番組の面 白い処かな。

「いい旅・夢気分」2000.11.22 O.A  

アクシデントがありました。今回のパートナー 松田純さんは私、初めてだったのですが、とても可愛くて機転も効いて楽しい旅が出来そうだな、と初日からいい感じで撮影が始まったのですが…実は朝からの腹痛を我慢していたらしく、お昼に病院へ。痛みを押して、その日一日頑張ってくれたのですが、腸痙攣で続行不可能となり、翌日急遽代打として藤代宮奈子さんが呼ばれ、前日一日分を後日撮り直す形で2日目のディナーシーンから再スタートする事になりました。
さあ、可哀想な宮奈子さん、富士山と聞いただけで、台本も読んでない、到着した途端、番組構成上、2日間の旅の感想など語らいながら、フレンチを食べなければならない。私は実際2日間を過ごして来たのでそれなりの感想も話せるけれど、彼女は何一つ観て無いのに話を合わせなくちゃならない。私にどんな話を振られるか、どぎまぎしながらも立派に辻褄合わせ切った!偉い!立派!嘘発見機でアリバイを訪ねられている犯人の様な緊迫した空気このエピソードをお読みになった方だけは、感じてください。そして騙し通 した宮奈子さんに拍手を送ってやってください。きっと後半になって嘘から解放された彼女は、見違えるようにのびのびとした表情になっていると思います。あっそれと、一日目を実は2度くり返したのに、初めて観た様に驚いてみせる私も、見ものかなぁ。

「柳橋慕情」 2000.821~12.18 O.A

お酒飲まない人は、本当に酔っ払いの芝居がうまい!
夫役の左とん平さんはほとんどお酒を召し上がらない。
一杯いろんな人の醜態、観て来たんでしょうね。
千鳥足のバランス転びそうだけど、持ちこたえる…絶妙です。
二日酔いで寝床から起きてくるシーンなんてプ-ンと酒臭いのが、
におい立ってくるようなリアルさでした。

かつて伴淳三郎さん、由利徹さん、左とん平さんが共演していた番組がありました。
今考えると夢のような組み合わせですよね。
その頃のエピソードを伺っているだけで、 いとしくって、おかしくって
そして何だか切なくって、 喜劇役者と言われた人達の、かもし出す哀愁ってほんと深い

「人情質屋の事件台帳」2001.7.9 O.A
余貴美子さんは、私、大好きな女優さんです。
御本人は、気を使いまくりの苦労性、気立てが善くって優しくて、そして適度に呑べえで…
それがカメラの前に立つと、全身からにじみでる潔さ!匂い立つ色香!哀愁
ナチュラルなのに妙にそそる唇
あのエッチなクチビルになりたくって、企業秘密盗んじまえと、メークしてる横で、根掘り葉掘り「どうぞ、良かったらつけてみて」と快く差し出してくれた口紅。
あぁこれで私も憧れの余貴美子クチビル!ルンルンと塗って
みても『ウ-ン‥エッチにならない…』あきれて見ていたメ-クさん曰く、顔のベースの色との微妙なバランスがあるとか。
いいよぉ どうせないものねだりだよ。
さて私の衣装なんですが、ず~~っと遠くから見れば十代。

差し入れ持って現場にやってきたマネージャー、「根岸さん、よくその格好で外歩けますね。ちょっと離れて歩きたいって感じです。」
でも、まんざら嫌いじゃないこの衣装。作品がシリーズになればいいなと、衣装さんに「Keepね」と、こっそり頼んであります。   

「はみだし刑事」2002.2.6 O.A
クライマックスは雪の北軽井沢。
衣装は春もののスーツ。
雪はなかったのに、何故かロケセットの八王子の病院迄、電気が切られ、
心の準備が出来て無い分だけ、底冷えの寒さが身にしみました。
観ている人は病院が白い息になる程寒いなんて、絶対に思ってくれないし。
で、この際、きっと役者以外には役に立ちそうもない携帯カイロの
使いこなし方、レクチャーしてしまおうかと。
まずは、腰、肩甲骨の間の背中、これは定番。
私のお勧めは膝の内側。サポーターなどで固定します。
そして靴用。最近は足先だけでなく靴底全体のが出ていますが、
原田組の浅間山荘機動隊役で氷点下新潟ロケを終えたばかりの
矢島健一さんは、 靴下二枚の間に普通の大きさの携帯カイロを二枚敷いても
熱くもなんとも無かったと云う…
本当に役者の仕事ってむちゃくちゃでしょう!
意外なところで、足首の前、甲の処 。これがなかなかいい。
手の甲もカイロ当てるとホッとします。
今回、平泉成さんのお勧めは首の後ろ。
みんな背広コートの襟足から赤い袋 の先が覗いて、
後姿がなんだかトッポイ刑事さんの集団になっていました。
ちなみに、暑い時にも首を冷やすのは速攻性がありますが、
健康的には冷やすのは、あまり良くないらしいです。

そんなこんなで、身に付けている携帯カイロの数、9枚。
が、靴に雪が沁みてしまえば、もう何やったって駄目です。
即、全身ガタガタ。 そう、結局は足先がポイント。
雪靴が履ければねぇ~
役者でもやってなければ、普通の格好で雪の中で一日過ごすなんて
馬鹿な真似はしませんよねぇ。


「ビビアン&三婆 大騒動再燃in台湾 伝説の占い師・温泉・食・なんでもアリアリ」
2002.5.4 O.A
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役者:根岸季衣のホームページ

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